ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュによる、スラッシュ feat. マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレターズ約4年ぶりの新作について、現時点で日本盤のリリース予定がないことから、一部で論議を醸し出しているようですね。
今回海外では、ギターメーカーのギブソンによるギブソン・レコーズ(そのまんまの名称ですけど、インパクトがありますね〜)からの初リリース案件であることや、日本のメジャーレーベル内での担当部署の違いなど、様々な事情が重なり、そうした決定に至っているようです。
確かに、スラッシュクラスの大物アーティストでも日本盤が出ないんだ〜と、意外に感じましたけど、驚きというよりもむしろ、採算云々ではなくビジネス的に特に必要ないと、海外の関係者がシンプルに判断しただけなんだろうなあ、と冷静に受け止める気持ちのほうが大きかったですね。
日本盤が出ない事態で思い起こせば、2009年にKISSの『Sonic Boom』が発売されなかった時は、むしろ結構な衝撃を受けました。ちょうどCDのセールスが急激に下がっていく時期でしたし、ビジネスに誰よりも敏感なKISSですから、CDの時代や日本盤の価値が終わりになっていくのを予感させる、象徴的な出来事に思えました。
あれから10年以上の歳月が過ぎて、CDから配信へと中心は移り、音源よりもライヴビジネス全盛になっていき、さらに各種音楽ストリーミングサービスが登場と、比較的パッケージ文化が根強く、年齢層も高いHM/HRジャンルにおいても、その聴かれ方や楽しみ方は一変しています。10年前と状況は全く違いますし、ましてや80年代のHM/HR黄金期と隔世の感があります。
海外からの情報を音楽雑誌やラジオ番組を通じて得ることしかできなかった80年代なら、日本盤が出ないというのは、確かに由々しき事態でしょう。けれども、今はインターネットを開けば、海外からの最新ニュース、インタビュー、バンドのバイオなど、ライナーノーツに書いてある程度の情報の大半は誰もが容易に手に入れることができ、精度が格段に向上した翻訳ソフトを使えば、外国語を読む障壁もほとんど感じません。
肝心の音源の方も、まずは試聴して楽しみたいのであれば、英詞まで見れるサブスクで十分でしょうし、パッケージ所有に拘りたい大ファンやマニアなら、オンラインを通じて全国どこでも輸入盤を手に入れられます。スラッシュの新作の場合、豪華なボックスセットも含め、CDとLPで計4形態ものリリースがありますから、十分満足ではないでしょうか。
よく洋楽系のメディアからは、日本盤が出ないと来日公演が実現しないから結局困るのは日本のファンですよ、みたいな話が出てくるのですが、それなら例えば、日本盤がもれなくリリースされてセールスも上げているメタリカ辺りが、こんなにも長く来日していない事実はおかしいわけで、、。結局のところ日本のHM/HRマーケットは、80年代と比べて、また欧米等の状況と比較しても、すっかり縮小してしまっているという事実を、受け入れるところから考えるべきでしょう。
日本盤が出ない→日本のレーベルから宣伝費が出ない→関連するメディアやコンサートプロモーターにお金が落ちない→だから来日が困難になる、という流れを考えているのだとすれば、それはあくまで音楽業界からの視点による不都合に過ぎません。
日本のHM/HRファンにとっても不都合だというロジックは、インターネットを通じて海外、さらにはアーティストと日本HM/HRファンがボーダレス繋がり、ファン自らが聴きたい音楽や欲しい情報を能動的に得られる現代には、もはや当てはまらないというのを、今回のスラッシュの件で改めて感じた次第です。
これからは例え大物アーティストであっても、リリースや日本へのプロモーションの手法は、さらに従来のステレオタイプのものでなくなっていきそうですね。今回のスラッシュのように、日本盤が出ないケースもあるでしょうし、サブスク限定(今もシングルでは多いですけど)も増えていくでしょう。パッケージはLPやカセットだけ、なんていうパターンがあるかもしれませんし、逆にサブスク解禁一切なしで、日本のファンに特化したリリースだって、まだまだあり得るでしょう。
こうやってサブスク紹介中心のブログを書いているからではないですけど、変わらないことが美徳であるHM/HRの世界でも、取り巻く状況は時代の激変に合わせて刻々と変化しているのをひしひしと感じます。HM/HR自体の楽しみ方だけは、海外やアーティストの動向も見ながら、しっかりアップデートしていきたいものです。
ということで、2月11日に海外で発売されるスラッシュ feat. マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレターズの新作は、現時点で3曲もすでにサブスク解禁されています。新曲でも、スラッシュの粘り気ある、お馴染みの艶やかなトーンのギターワークに絡みつく、マイルスのヴォーカルの素晴らしいこと!
個人的には、なぜかデビカバを思い出してしまうんですけど、伸びやかなハイトーンと、味わい深くエモーショナルを極めた表現力の高さは、色んなバンドから引っ張りだこなのが改めてうなづけます。メロディもいい意味でキャッチーなので、耳にスッと入ってきますし、今のHM/HRシーンで貴重なヴォーカリストですね〜。
こうして、アーティストからの音源を、ストリーミングでダイレクトかつ海外と同タイミングで、気軽に楽しめるなんて、素直にいい時代だと思いたいものです!
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