ラッシュ最大のモンスターアルバム『Moving Pictures』の40周年記念の各種エディションが先日発売されましたね。全米だけで400万枚を売り上げた説明不要の世界的名盤ですので、アナログを含む6種類ものスペシャルなエディションが用意されていて、マニアの方はすでにいずれかを手に入れているでしょう。
筆者は豪華セットの画像を眺めて満足してます(笑)。81年のみ発表ライヴを含む音源はストリーミングでも楽しむことができますね。YYZの新作アニメーションMVも興味深い仕上がりですけど、こちらもApple Musicにアップされています。
解散してもなお話題を振りまいてくれるラッシュですけど、少し前に海外のギターサイトでアレックス・ライフソンのインタビューが掲載されました。アレックス曰く、まだアーティストとして余力も残っていたし、ラッシュを続けることはできたけど、あの時にラッシュを引退できて良かったというんですね。
素晴らしいライヴができた時点で、最高の終わり方をしたと。ファンの中には、たとえ解散が悲しくても、まだ良い状態のバンドやライヴの記憶が永遠に残り続けると、アレックスは語っています。いやあ、これらの言葉に筆者も思わず頷いてしましました。
いわゆるレジェンダリーなロックバンドが高齢化して、いつ引退するのか否かという問題は、今後さらに取りざたされるでしょう。どのバンド、アーティストとは言いませんけど、黄金期の面影もないライヴパフォーマンスや、退屈な新曲などで、自らの偉業に泥を塗るような醜態を晒してしまうケースも少なくありません。
もちろん、不断の努力で年齢を重ねてもなお、かつてのイメージと変わらないアーティストもいますし、ラッシュとて、ニール・ピアートの不幸がなければ、現役を続行していたのかもしれません。盟友ゲディ・リーは同意見ではないかもしれません。それでもアレックスの言う、晩節を汚さない”引退の美学”には激しく賛同したいですね。
まだやれるからこそ、余力を残してラッシュとしての活動をやめる。その引き際のタイミングや決断する勇気が、本当に素晴らしいと思いました。そうしたアレックスのアティテュードがあるからこそ不朽の遺産である『Moving Pictures』のような作品が、ファンの素晴らしい記憶としていっそう残るのでしょうし、今回のようなアニバーサリー企画の価値も格段に高まるのでしょう。
アレックスは、もうラッシュの楽曲は演奏するつもりはない、とも語っています。実際に、ラッシュで使用した貴重なギターの数々を、オークションに出品して話題になりました。今は家でアコースティックギターを弾く時間が楽しい、というひと言も、なんだか胸に刺さりますね。
だからと言って音楽の仕事自体をやめるのではなく、生産的に仕事を続けていくとアレックスは言っています。実際に、新プロジェクトENVY OF NONE(エンヴィ・オブ・ノーン)を始動させ、4月にアルバムをリリースしました。
そのサウンドは、ダークでオルタナティヴ、エレクトリックなシンセロックというべき、斬新なものです。正直、筆者は全く聴きたい領域の音楽ではありませんし、ラッシュの多くのファンも同じでしょう。ストリーミングでアルバム全曲が聴けるので、一度試してみるのはいいかもしれません。
それでも、ラッシュと一切の共通点がない音楽をクリエイトしていることに、アレックスの強い意志や新しいことへの挑戦する意欲をひしひしと感じました。ラッシュっぽいものを求めているのであれば、ラッシュのバックカタログを聴けばいい、あれ以上のものを新たに生み出すことは不可能だから、とアレックスは言いたいのでしょうね。
そんなアレックスの一流アーティストとしてのアティテュード、誇りをひしひしと感じました。これからの創作活動を応援したいですし、ラッシュも改めて、時間をかけてじっくり聴いていきたいと思います!
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