※CDじゃなくても、ストリーミングで聴ける新作をご紹介します!
2023年4月7日、アメリカのハード・ロック・ギタリスト、ポール・ギルバート(Paul Gilbert)のソロアルバム『The Dio Album』がリリースされました。
今年は日本で行われるミスター・ビッグのフェアウェルツアーでも話題を振り撒くポールですが、企画色の強いユニークなソロアルバムを発表しました。彼が敬愛するロニー・ジェイムズ・ディオを称えて、ロニーが歴代のバンドで歌ってきた楽曲からセレクトしてカヴァーしてるんですね。
真っ赤な色味のジャケットに刻印されたポールのアーティスト表記とタイトルがフラクトゥール書体になっていて、雰囲気バッチリですね〜。横向きのドラゴンのイラストもロニーの世界観どっぷりで、本気具合を伺わせてくれます。
ギタリストがギタリストを対象にカヴァーするパターンは数多存在しますけど、ヴォーカリストにフォーカスするのは、ありそうでないパターンかもしれません。稀代の名ヴォーカリスト、ロニーが対象だからこそ成り立つ企画でしょうし、そのロニーとコンビネーションを組んだギタリストの個性があってこそでしょう。
今回は、ブラック・サバス、レインボー、ディオの楽曲からそれぞれ4曲ずつがセレクトされており、ど定番の名曲からちょっと意外な選曲もあるのが興味深いところですね。それぞれ対象となるギタリストであるトニー・アイオミ、リッチー・ブラックモア、ヴィヴィアン・キャンベルのプレイをポールがどう解釈したのか、こちらも聴きどころと言えますね。
ドラム以外のパートはポールが担当していますが、全編聴いてみてまず驚かされたのが、ロニーのヴォーカルラインを再現するポールの豊かな表現力でした。ヴォーカルラインをギターで引くのって、一歩間違えるとスーパーのBGMになりますよね(笑)。よくそういう安っぽいアルバムを耳にしてしまうこともありますが、ポールのアプローチは全く異なります。
メインの歌メロはもちろん、ハモリ、独特なシャウトやしゃくり、歌メロ以外の「む〜ん♩」みたいな息遣いまで、細かくロニーのヴォーカルパフォーマンスを再現(表現)してるんですね。もちろん、音符だけな訳ですから全く異なるものですけど、違和感なく楽しめました。
ポールの多彩な表現力のおかげで、ロニーが歴代歌ったヴォーカルラインが、バンドを問わず素晴らしく、いかに我々HM/HRファンに馴染むものだったのか、改めて実感させられましたね。
ギタープレイの方もリフやソロも大筋はオリジナルを忠実に再現している点も、ポールの3人のギタリストへのリスペクトを感じました。ソロについてはついつい光速になっていますけど(笑)、もちろんそれはポールのファンが期待していることですからね。
ポールは、メタルのギターリフにこんなにのめり込んだのは久しぶりで、まるで金塊を掘り起こしているようだった!と、本作に関してコメントしています。
超絶な技巧を身につけ、音楽性の幅も広げていったポールにとっては、一周回って自らのルーツのひとつに立ち返り、ロニーが生み出した音楽を通じてその素晴らしさを改めて噛み締めているのでしょう。特殊な企画アルバムですけど、そうした純粋な思いやリスペクトが息づいているからこそ、後味の良い聞き応えのある作品に仕上がったのでしょう。
今回は2曲目に収められたレインボーの名曲「Kill the King」をピックアップしました!ライヴ仕立てにアレンジされているのはご愛嬌ですね〜。ロニーのヴォーカルラインの再現力と解釈が見事ですし、ポールらしくリッチーのソロが光速化しています!
聴いてほしい度
75%
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