アイアン・バタフライ(IRON BUTTERFLY)のリードシンガー/ オルガン奏者/メインソングライター、ダグ・イングル(Doug Ingle)が、2024年5月24日、78歳で亡くなりました。
60年代後期のロックシーンに始まり、サイケデリック/アート・ロックの伝説的存在として活動したバンド、アイアン・バタフライの創設メンバーであるダグの訃報が届きました。
1967年から69年頃のラインナップでは、2003年にギタリストのエリック・ブラン、2012年にベーシストのリー・ドーマン、2021年にドラマーのロン・ブッシーがそれぞれ亡くなっていますので、全盛期のアイアン・バタフライのメンバーは皆いなくなってしまいました。
アメリカ・ネブラスカ州オハマで生まれたダグは、1966年にサンディエゴでアイアン・バタフライを結成。1968年にはアトランティックレコーズと契約してアトコレーベルから1枚目のアルバム『Heavy』でデビュー。クリームら当時の有名ロックバンドとのツアーを行いました。
そして、同年2枚目のアルバムとしてリリースされたのが『In-A-Gadda-Da-Vida』でした。ダグ作による、LPのB面をフルに使った17分余りに及ぶタイトル曲「In-A-Gadda-Da-Vida」は、彼らの代表曲にして60年代ロック史に燦然と輝く名曲として刻まれています。酩酊状態で作ったため、歌詞の発音が聞き取りにくかったことから、この変わったタイトルが生まれたらしいですね。
「In-A-Gadda-Da-Vida」は3分弱のヴァージョンとしてシングルカットされ、全米TOP40に入るヒットを記録。アルバムは全米4位、これまでに全世界で3000万枚!以上のセールスを記録していますから、まさにロックレジェンドですよね。Spotifyでも、シングル、アルバムヴァージョンを合わせると約5000万回再生されています。
同曲の1度聴いたら脳裏に焼き付いて離れないヘヴィなリフレイン、インプロヴィゼーションのドラムソロ、オルガンソロを挟みながら自由な発想と感性で展開していく曲調は、サイケデリック/アート・ロックの真髄をどっぷりと味わせてくれるでしょう。
そんなアイアン・バタフライを聴くのは、リアルタイムではなかったメタルファンがほとんどでしょう。その存在を初めて意識させてくれたのが、筆者もそうでしたけど、何と言ってもスレイヤーがカヴァーした「In-A-Gadda-Da-Vida」によってでした。
1987年の映画『Less Than Zero』のサウンドトラックに、リック・ルービンのプロデュースによるスレイヤーのカヴァーヴァージョンが収録されています。原曲から約20年後のカヴァー挑戦ですけど、脂の乗り切った時期のスレイヤーによる、不穏でファスト&ヘヴィなスラッシュメタルアレンジが実にクールで、やけにハマっています。
アイアン・バタフライはスレイヤーだけでなく、さまざまな後世の有名HM/HR系のバンドにも影響を与えており、アイアン・バタフライが生み出したサウンドの中に、のちのHM/HRに通ずるエッセンスを感じ取っていたんでしょう。改めてその功績の大きさを実感しますよね。
追悼の1曲として、勿論「In-A-Gadda-Da-Vida」の17分に及ぶ歴史的名演のアルバムヴァージョンをじっくりと聴きながら、ご冥福をお祈りしたい思います。
R.I.P. Doug Ingle
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