グレイト・ホワイト(GREAT WHITE)のオリジナルシンガー、ジャック・ラッセル(Jack Russell)が、2024年8月15日、63歳で亡くなりました。
LAメタルムーブメントを代表するシンガーの一人、ジャックの訃報が届いてしまいました。今年7月に難病のレビー小体型認知症と多系統萎縮症の診断が下されて、ライヴツアーからの引退を発表した矢先でした。SNSで家族が公表しましたが、家族に囲まれての最後だったようです。かつての盟友、グレイト・ホワイトからもオフィシャルで、最大限の敬意を表した追悼コメントが出されていますね。
シンガーとして最後の音源は、今年1月にリリースしたトレーシー・ガンズとのプロジェクト、ラッセル・ガンズの作品となりました。
グレイト・ホワイトでのシンガーとしてのキャリアを主軸とした人生は、まさに波乱万丈、栄光と悲劇と言えるものでしたね。1978年にマーク・ケンドールと結成したバンドを前身に、1982年にグレイト・ホワイトと改名。1982年に自主制作EPを発表すると、LAメタルブームに乗ってメジャーに進出しました。
以降、多数のヒット作を生み出しながら80年代〜90年代を駆け抜けたものの、2000年に盟友マークらが脱退し、オリジナルのグレイト・ホワイトは消滅。ジャック・ラッセルズ・グレイト・ホワイトヘと移行しましたが、この時のツアーのライヴ中に、ロック史上に残る大惨劇となった100人もの死者を出す火災が発生し、思わぬ形でその名は世界に広まってしまいました。
それでも2006年にはジャックとマークが再び共にするグレイト・ホワイトを再編。音源制作やライヴも行いましたが、2009年にジャックが負傷を追い脱退。その後、復活したジャックは2011年に、再びジャックによるグレイト・ホワイトとして再始動。断続的に活動を続けていました。
グレイト・ホワイトはLAメタル初期に登場したバンドとして思い入れも深いですし、その顔とも言えるジャックの声質と唱法は、彼自身が敬愛するロバート・プラントを彷彿とさせる印象深いものでした。
初期は比較的LAメタルらしい煌びやかさもあるサウンドでしたが、徐々にブルージーな要素を取り入れ、『Once Bitten』で完成の域に到達。浮わついたヘアメタル勢とは一線を画す本格派の渋いハード・ロックは、聴くものにルーツとなる70年代のハード・ロックへの扉も開いてくれました。
ジャックのエモーショナルな歌唱とボイスは、ブルージーなテイストでこそ本領発揮し、マークとの最良のコンビネーションも冴え渡りましたね。妥協しないハード・ロック本来の生々しさやダイナミズムを味わせてくれた名作『Once Bitten』で、グレイト・ホワイトはスターダムへと駆け上がりました。その作品とジャックの歌唱が放つ本物の輝きは、40年経過した今も色褪せません。
追悼の1曲としてはやはり、Spotifyでの再生回数が約2000万回、7分以上に及ぶブルージーなハード・ロックを決定づけた不朽の名曲、名演「Rock Me」をじっくりと聴きながら、ご冥福をお祈りしたい思います。
R.I.P.Jack Russell
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