※CDじゃなくても、ストリーミングで聴ける新作をご紹介します!
2023年4月14日、アメリカのヘヴィ・メタル・バンド、オーヴァーキル(OVERKILL)の約4年ぶり20枚目のアルバム『Scorched』がリリースされました。
昨日ご紹介したメタリカ新作の話題で持ちきりのHM/HRシーンですが、オーヴァーキルのニューアルバムがまさかのメタリカと同日発売です。
説明不要の東海岸スラッシャーの大御所、オーヴァーキルですが、原形は80年でオーヴァーキルに改名したのが82年と、実に40年以上の活動歴を誇ります。メタリカとほぼほぼ同じような歴史を刻んできたわけですから、いやあ偶然なんでしょうけど、リリースが重なるとは不思議な因果を感じてしまいますね~。
というか、80年代当時の自分に「遠い未来の2023年に、メタリカもオーヴァーキルも元気にアルバムをリリースしてるであろう!」なんて予言者が現れても、アホなの??と絶対信用しなかったでしょうね(笑)。当時アンダーグラウンドの極みだった両者が、年齢を重ねて轟音を奏で続けてるなんて全くの想像外でした。
さて、現在のオーヴァー・キルのメンツは、ボビー“ブリッツ”エルズワース(Vo)、デイヴ・リンスク(G)、デレク・テイラー(G)、D.D. ヴァーニ(B)、ジェイソン・ビットナー(Ds)となっています。
近年のメンバーは歴代の中でも充実度は高いですけど、正直なところ、ブリッツとD.D. さえいればオーヴァーキルとして成立するわけで、メタリカのジェイムズとラーズの位置づけとも共通しているでしょう。
すっかりモンスターバンドになったメタリカと、スラッシュ道一筋に駆け抜けてきたオーヴァーキル。全く異なる歩みを重ねてきた両者をこうして改めて並べてみると、サウンドも大きく変化し成熟したメタリカとは打って変わり、オーヴァーキルの80年代当時と何も変わらぬ、怒涛のスラッシュと破天荒なエナジーに、とにかく終始圧倒されます。
これが40年以上の長きに渡り活動を続け、20枚もの作品を重ねたバンドとは到底思えません。ボビーとD.D. に怒りの燃料を注ぎ続けている根源は何なのか、知りたくなる凄まじさです。生き様を投影したような轟音には、心底リスペクト以外の何物でもないですよね。
今なお、フレッシュな音像を叩きつけられるのは、屈強な肉体でアンチエイジングを極めたボビーの身を削るような絶唱と、鋭い眼光でビキビキと刺激的な低音を吐き出し続けるD.D. の、唯一無二なるコンビネーションが機能してこそでしょうね。
今作にしてもそんな絶好調の2人を核にして、「これぞオーヴァーキル!以上!」と快哉を上げたくなるヘヴィ・メタルが、ぎっしりと惜しみなく詰め込まれています。賛否を呼んだ『I Hear Black』のような作品もありましたけど、基本は一貫してオーヴァーキルにしか成しえないサウンドと世界観を不変のままに継続しているのは凄いことです。
一聴すると2バスのおびただしい連打に代表される疾走感に耳を奪われがちですけど、意外とスピードに頼るのではなく、時にヘヴィに時にグルーヴィーに楽曲の中で様々な色合いを見せてくれるのは、ベテランの面目躍如たる部分ですよね。
ヤバい曲が目白押しですけど、今回は3曲目に収められた「The Surgeon」をピックアップしました!イントロのビッキビキのDDのベースから雪崩のように楽曲に流れ込み、ボビーの追い立てる呪文のような口上のヴォーカルへと繋がる流れは、まさに「ザ・オーヴァーキル!」で、狂気に満ちていますね〜。
疾走しようがヘヴィネスに迫ろうが、常に突き抜けてくるボビーの強烈なヴォーカルですが、未だに声の衰えは皆無。むしろ依然よりも強靭にどの曲でも耳に残るメロディをハッキリと歌い上げていて、改めてめちゃくちゃ歌唱力自体が高いシンガーだと実感させられます。
サウンドプロダクションも不必要に音圧をかけまくることなく、あくまでもオーガニックな色合いが残っていて、人力での凄みが伝わってくるのも好印象ですね。メタリカの新譜を聴くロックファンにも一聴してもらい、BIG4と少なくとも同等のバンドが現存することを実感してほしいものです!
聴いてほしい度
89%
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