※CDじゃなくても、ストリーミングで聴ける新作をご紹介します!
2024年3月8日、フィンランドのヘヴィ・メタル・バンド、ソナタ・アークティカ(SONATA ARCTICA)の約5年ぶり11枚目のアルバム『Clear Cold Beyond』がリリースされました。
3月はHM/HRシーンでネームバリューのあるアーティストの新作リリースラッシュということで、少し時間が経ってますが今回はソナタをいってみましょう~。
ソナタの新作を早々に聴くのは正直久々かもしれません。筆者の場合、初期2枚の頃は大好きでリアルタイムで聴きまくっていたんですが、メロスピから離れていった『Unia』辺りから熱が急速に冷めてしまいました。以前のコラムでもデビュー作を取り上げてましたね。
ヤニ・リーマタイネン脱退の痛手がやはり大きく感じられてしまい、最後にライヴを観たのは確かアイアン・メイデン・フェスだったはずです。
そんな感じで、かれこれ10年、いや15年以上は新たにリリースされた楽曲もまともに把握していない程度だったんですが、今作のリリース紹介をたまたまネット上で目にしたところ、「原点回帰」の4文字が。
メロディやスピードといった宣伝文句も躍り、実際にミキシングは初期作を担当したミッコ・カーミラを起用。ジャケットのアートワークは否が応でも『Silence』を彷彿とさせるもので、ふむふむ、ならば一度聴いてみようかな~と思った次第でした。
トニー・カッコ(Vo)いわく、前作との間のソフトなアコースティック企画を経たことで、よりヘヴィ・メタルをプレイすることに対し新鮮に感じたようですね。しいてはそうしたマインドが、初期の音楽性への回帰を後押ししたのでしょう。
かくして疑うこともなく、過度な期待もせず、真っ白な状態で聴いてみたんですが、、何でしょうか、この微妙で物足りない感覚は。。
「原点回帰」と銘打っている通り、冒頭からBPMの速い、疾走メロスピチューンが連発。4曲目でスローダウンしつつも、5曲目までノンストップで疾走を続けていきます。以降は8曲目だけが疾走系で、あとはミッド、スローチューンですね。
奇しくも疾走曲が前半に固まっているのは、プリーストの新作のようですけど、曲単位で聴いていくサブスク・ストリーミング時代は、アルバム全体の構成云々よりも、できるだけ早送りされないように前半を飽きさせないうえで、常套手段といえるでしょう。
でも、疾走しているだけで何かが違うんですよね。。エッジの効いていないのっぺりとした音作りや演奏は、初期に感じられたヘヴィ・メタルのダイナミズムや、テクニカルであってもスリリングさに欠けています。チープなシンセの音には閉口させられますし、何より肝心のメロディの扇情度やフックが普通過ぎて、弱すぎて印象に残りません。
速さの問題ではなく、初期2作にあったハッとするようなメロディやプレイが皆無なんですよね。。AIが作曲したみたいに表面だけ初期のエッセンスを踏襲して、魂が入っていないというか。まるでソナタの劣化したフォロワーによる、並の作品を聴いているような錯覚を覚えます。
アーティストとして20数年以上のキャリアを重ねてきたわけですから、初期の音楽性に深みを加えた作品にしてほしかったというのが正直なところですね。
ちょっと楽しみにしていた分、色々と苦言を書いてしまいましたけど、、アーティストとしての勢いが尻つぼみになってしまうにはまだまだ若すぎるので、もうひと踏ん張りして良い音楽を生み出してほしいものです!
今回は疾走曲ではなくバラード調の「The Best Things」をピックアップしました!こうした希望を感じさせるキャッチーな曲のほうが、メロディの良さがまだ生かされていますね。
聴いてほしい度
48%
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