※CDじゃなくても、ストリーミングで聴ける新作をご紹介します!
2021年6月16日、ドイツのメロディック・パワー・メタル・バンド、ハロウィン(HELLOWEEN)の、7人編成として初となるアルバム『Helloween』がリリースされました。
日本における洋楽HM/HRシーン、上半期最大の話題作の登場です。マイケル・キスクは『Chameleon』以来、約28年ぶり、カイ・ハンセンは、キーパー2以来で実に約33年ぶり!の復帰だそうです。一過性の復活お祭り騒ぎに当初思えた、パンプキン・ユナイテッドを経て、まさかの新作リリースが実現しました。7人編成の大所帯になり、ブルース・ディッキンソンが復帰時のアイアン・メイデンと、何か似たような展開を感じますね。
音楽ストリーミング、サブスクでは、発売日の日付が変わった深夜0時に、しっかり音源がアップされていました〜。CDの初回盤には、デジパックブックレットや、新曲3曲を含むボーナス入りCD、はたまた7人のイラストシール(笑)がランダムに付いていますけど、まずはストリーミングで通常盤の12曲を聴いて(11曲目は短いSEなので、実質11曲入りですね)、CDを所有したいほど気に入った場合のみ購入しても間に合うでしょう。
筆者にとってハロウィンは、『Walls of Jerico』がリアルタイムの入り口で、キーパー2部作でご多分にもれずどっぷりハマり、当時のライヴを何度か体験しています。しかしながら、アンディ時代に入り『Master of the Rings』辺りを最後に、正直言って徐々に興味が薄まってしまい、、その後は、機会があれば聴く程度の存在になっていました。
そんな古い感覚の耳で(今回は同じような、お久しぶりのオールドファンも多いと思いますけど)、解禁された新作を早速に全編聴いてみました!
オールドファンにとって最注目は、かつてのハロウィンサウンドを唯一完全継承した、ヴァイキー作の1曲目「Out of the Glory」でしょうね。怪しげなイントロダクションに、アレレ?と不安になるのもつかの間、突然ギアを上げ2バスで疾走し始めるメロパワに乗せて、キスクが高らかに歌い上げ始めた時、やっぱりこれこそがハロウィンだよ!快哉を叫びたくなること必至です。転調するフックの強烈なサビメロもたまりません。
カイのブチギレシャウトによる、中間部のメタリックなパートもいいアクセントだし、メロパワのお手本のようなツインギターも勿論、これでもかと登場します、バンド側もこれこそが最もファンの求めているものだと、わかっているのでしょう。なんだか、懐かしい恋人に再会したような、甘酸っぱい?感覚に陥りましたね〜(笑)。
掴みはOKなものの、以降は基本的に、アンディ時代のハロウィンに見られたテイストをベースにした楽曲が続いていきます。ストリーミングで先行公開されていた2曲目の「Fear of the Fallen」もドラマティックで悪くないんですけど、同じ疾走メロパワでも、キスクがメインのテイストと、何かが少々違うんですよね。
例えば、3曲目に「I want out」風のノリが出てきたり、8曲目、10曲目、12曲目辺りのメロパワも、キスクの声が聴こえると、おっ!と思いました。けれども、アンディには申し訳ないものの、80年代のハロウィン風のメロディや登場するたびに、今回は全編キスクがメインで歌ってほしかった、という思いが募ったのも正直なところです。
もし、売らんがために今回、例えば『Keeper of the Seven Keys Pt.3』なんていうタイトルだったら、納得いかなかったかもしれません。ですが、セルフタイトルが示す通り、バンドの長い歴史の総決算的な作品と位置づけると、キスクやカイ以上にずっと在籍が長い、アンディ時代のテイストの延長線上が中心なのは、いた仕方なく、あくまでもその中に、キスクやカイ時代のテイストをバランスよく織り交ぜた作品、と考えるのが妥当なのでしょう。
1つだけ気になったのは、ドラムのサウンドプロダクションです。なんだかマシンのように平坦で、インゴのドラムキットを使ったアナログな音創りに拘ったのなら、キーパー2のような、タイトな響きと奥行きのある鳴りを、現代に再現してほしかったですね。
期待が大きかった分、色々書きましたけど、疾走チューン満載で、メロディック・パワー・メタル、キーパーメタルの始祖としての貫禄を見せつける、力のこもった良質な作品であることは間違いないですし、アンディ時代も変わらず応援し続けたファンの方なら、十分満足するでしょう。コロナ収束後は日本も含むライヴ展開も期待できそうですね。
楽曲はもちろん、前述の「Out of the Glory」を選んでみました!時の流れとともに、すっかり風貌も変わってしまったキスクですけど、これだけ歌えるヴォーカルパフォーマンスを聴かされると、彼がハロウィンから離れてしまった”失われた約30年間”は、ジャーマン・メタルにとって大きな損失だったなあ、と思わずにはいられません。
聴いてほしい度
82% 1曲目は90%
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