※プログレ知識薄めのHM/HR視点で選ぶプログレをご紹介します!
アメリカのプログレッシヴ・ロック・バンド、マジェラン(MAZELLAN)が、1991年にリリースした1枚目のアルバム『Hour Of Restoration』の1曲目に収録。
80年代のHM/HRシーンにおいて、速弾きギタープレイヤーを軸にムーブメントを起こしたマイク・ヴァーニーによるシュラプネル・レコーズでしたが、マイクが90年代に携わった新たなレーベルがマグナ・カルタ・レコーズでした。
マグナ・カルタはニューヨークに本拠地を置き、ザ・ロッズのマネージャーなどを務めたピーター・モーティセリが、89年にマイクを共同パートナーとして立ち上げました。2人の知見を合わせて挑んだジャンルが、プログレッシヴ・ロック/メタルを主軸とした新たな音源制作でしたね。
速弾きギター系とプログレを比べると、テクニカルという側面では共通点もあるので、プログレへの接近も当時は自然に思えました。タイミング的にも、ちょうど89年にドリームシアターがデビューし話題を呼んでいましたからね。
そのレーベル第1弾アーティストとして登場したのが、マジェランでした。バンドといってもトレイン・ガードナー(Vo, Key)とウェイン・ガードナー(G)兄弟のみがメンバーで、他のパートはゲストを迎えて音源は制作されています。
90年代初頭、オルタナ・グランジが台頭真っ只中とは思えぬ、まさに180度音楽性を異とする本格的なプログレサウンドは、潔いほどの異彩をシーンで放っていました。しかも、イエスをはじめとした70年代のプログレ名バンドのエッセンスを、HM/HRファンにもとっつきやすく解釈して消化した、確固としたクオリティの作品に仕上げてきたのは驚きでしたね。
今回ピックアップした「Magna Carta」は、1曲目にして実に約15分に渡る長尺で展開される真性プログレッシヴ・ロック・チューンです!何せ曲タイトルに大事なレーベル名を冠しているくらいですから、イマジネーションを掻き立てられる素敵なジャケットを見ながら聴くと、新レーベルの船出を想起させられます。
唯一の不満は、よく指摘されたようにドラムが無機質な打ち込みである点でしょう。いつか生ドラムに差し替えたヴァージョンが聴けないものかと願ってしまいます。
優れた新世代のプログレを提示したマジェランでしたが、残念ながら2014年にウェイン、2016年にトレントがそれぞれ亡くなっています。2人が時代に抗い、本物志向の音楽をクリエイトしてくれた記録を、最近解禁されたストリーミングでもじっくり味わっていきたいですね。
ぜひ、一度聴いてみてください!