2月19日に発売されたホワイトスネイク(WHITWSNAKE)の『The Blues Album』を、ストリーミングで聴きながら、思い浮かんだ雑感を書いてみたいと思います〜。
- ホワイトスネイク、新編成ベスト三部作完結
- 多くのバンドがハマるベスト盤やリレコーディングの罠
- マスターのリミックス盤は“いいとこ取り”のアイデア!
- オリジナルとの“違い探し”や“新発見”の楽しさは格別!
- バンドもファンもWin-Win!ベテランがトライすべき最適解
ホワイトスネイク、新編成ベスト三部作完結
ホワイトスネイクの新編成ベスト・アルバム(という呼称でレコード会社のHPに書かれてます)の第三弾、青いジャケットが目印の『The Blues Album』がリリースされましたね〜。これで同企画のベスト盤、ロックトラックを集めた『The ROCK Album』、ラヴソングを集めた『Love Songs』を含めて、3枚が出揃ったことになります。
『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』をはじめ、一連のアニバーサリー・デラックス・ヴァージョンを成功させたホワイトスネイク(というかデビカバ)とライノのチームによる、80年代のみならず、それ以降の作品も含めて、旧音源を最大活用をする策略の一環ですね。
これが感心するほどに、お見事な“オヤジホイホイ”の悪巧み(笑)になってます。
多くのバンドがハマるベスト盤やリレコーディングの罠
旧音源や昔の(全盛期の)楽曲を使っての企画は、いろんな方法が考えられます。まず、単純にベスト盤に関しては、世の中にもう出尽くしていますし、どのバンドでも考えつくでしょう。
ストリーミング全盛の今、よほどパッケージに付加価値をつけないと、音源データ集としてぐらいしか旨味がありません。ホワイトスネイクの場合でも、いろんな貴重資料は、デラックス盤などで放出済みですからね。
次の選択肢として、今のメンバーでリレコーディングする手が考えられます。LAメタル系で、かつてメジャーディールを持っていたバンドが、権利関係でオリジナル盤を自由に扱えないケースなどで、場合によってはアルバムを丸ごとリレコするパターンも、よく見受けられます。
けれども、これはアーティストにとっては、曲作りのプロセスはないものの、結局のところ新作をレコーディングするのとあまり変わらないので、手間と予算がかさんでしまいますね。
こちら失敗例。。なんか違う曲調になってます。。
こちらも失敗例。。歌メロの崩壊具合が(汗)。。
何より、この手のいろんな作品を聴きましたが、残念ながらオリジナルを超える事例に、殆どお目にかかったことがありません。。音質だけは良くなってるケースもありますが、むしろ低予算で悪化していることすらありますね。
さらに、各メンバーのパフォーマンスが劣化(特にヴォーカルは顕著)していると、自らの栄光に泥を塗る改悪にしかなりません。デビカバにしても、昔の声域を再現できないのは、自明だったんでしょう。
マスターのリミックス盤は“いいとこ取り”のアイデア!
そして最後の選択肢が、オリジナルのマスターを直接いじっていまうパターンです。今風にお化粧直しして、準新作のごとく世に送り出すということですね。これにはリマスタリングという名の、インチキなお化粧直しの方法(失礼!)は含まれません。
ちゃんとオリジナルのマスターを捜し出しリミックスして、スタジオで再構築する制作作業が入ります。場合によっては、新たな音源を追加、差し替えすることもありますね。
作業的にも予算的にも、単なるベスト盤とリレコーディングの、ちょうど中間と言えるでしょう。家に例えると、築30年のリフォーム物件みたいなもんでしょうか(笑)
ただし、これが実現させるのは、意外と容易ではない気がします。今回のホワイトスネイクの場合でいうと、、、
・30年以上前のマスターテープが良好に保管されていたこと
・バンドといえど、デビカバが大部分を仕切っているため権利関係がクリアできたこと
・そして、何よりデビカバ御本人が、おそらくノリノリだったこと(笑)
等、障壁が少なかったのは大きかったでしょう。
オリジナルとの“違い探し”や“新発見”の楽しさは格別!
結果として生み出されたこの3作は、オールドファンにも好意的に受け入れられているように見て取れます。筆者もオリジナル音源と改めて比べつつ聴いてみましたが、今風の音圧をがっつりかけたサウンドで、全編まとめられていたのには驚かされました。
そして、元ネタの時代が全く違う各楽曲が、ちゃんとトータルにバランスをとって吟味し並べられて、まるで新しい作品のようにコンパイルして、息づかせているのはお見事!と感心してしまいました。
まあ、冷静に選曲を見ていくと、ロック、ラヴソング、ブルースと、それぞれ正しいんだか、よくわからない括られ方ではありますけどね(笑)。
オリジナルの音源にある曇りが、テクノロジーを駆使することで、格段にクリアになっているため、今まで判別が難しかった細かいニュアンスや、果ては聴こえなかった音まで、しっかり聴き取れるようになったのが、何とも嬉しいですよね。
オリジナルでフェイドアウトしていた後のプレイも聴けたりするので、こんなことをやっていたのか〜、と違い探し(間違い探しではありません)をする楽しみもあります。
個人的には、『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』の、あの独特なボヤ〜っと残響の効いた、オリジナルの音質を死ぬほど聴いて慣れ親しんでいるので、リミックスには若干の違和感を覚えましたけど、新鮮な気持ちで素直に楽しめました。
あくまでもオリジナルマスターをベースにした利活用なので、当たり前ですが、当時の素晴らしい楽曲とパフォーマンスには何ら変化がありません。この事実こそが、この企画における、これ以上ないアドバンテージになっているんですね。
バンドもファンもWin-Win!ベテランがトライすべき最適解
いろんな意味で、今回の3部作は、バンドとレーベルの商魂のたくましさの結晶(汗)が、ファンのニーズ、満足度と見事にマッチした、まさにwin-winの好例と言えるでしょう!
HM/HRを含むロックファン、ロックバンド達の多くが高齢化していく中で、今後、80sに栄華を誇ったネームバリューのあるベテランHM/HRバンド達が、同様な作品を企画してリリースするのは、絶対にビジネスモデルとしてアリ!だと確信します。
ここまで拘ったコンパイルは難しいかもしれませんが、アルバム単位そのままでも構わないので、ぜひ、どんどん真似してほしいですね。
きっと今頃、すでにリレコーディングベストをリリース済みの、KISSのジーン・シモンズ辺りが「その手があったか!しめしめ」と、企画し始めてそうな予感がしてます(笑)。
デビカバ自身もここまで上手くいくと、これでハイ終了〜とは思ってないでしょうね。まだまだある過去音源をさらにどう料理して、新たな価値をどんな悪知恵?で生み出すのが、最後まで、いい意味で商魂のたくましさを見守りたいと思います(笑)
それでは、オリジナルではフェイドアウトされて聴くことができませんでしたが、ジョン・サイクスのプレイが、やっぱり凄まじかった!この曲をどうぞ〜。
こちらが言わずと知れたオリジナル