※CDじゃなくても、ストリーミングで聴ける新作をご紹介します!
2021年6月18日、アメリカのロック・バンド、スティクス(STYX)の約4年ぶり17枚目のニュー・アルバム『Crash of the Crown』がリリースされました。
前作の『The Misson』が約14年ぶりでしたので、今回は比較的短い方のスパンで新作が登場しました。ちょっと切ないのは、前作同様に日本盤の発売予定がないことです。筆者も『Paradise Theather』に伴う初来日公演を運良く体験していますが、あの80年代初頭の日本での盛り上がりは、ボストン、TOTO、ジャーニーあたりと比べても決して劣らなかったので、今の状況は寂しい限りです。
やはり、全盛期のスティクスの顔であったデニス・デ・ヤングとの別離、というのが大きかったでしょう。ローレンス・ガーワン(Vo、Key)を迎えた2000年の来日公演では、正直かなり厳しい集客で、すでに日本での人気の凋落の現実を突きつけられました。しかしながら、そのローレンスのパフォーマンスが素晴らしく、個人的には見限らず、バンドの動向を気にかけていました。
さて、日本盤は発売されなくても、輸入盤の入荷を待たずに、ストリーミングですぐに新作を聴くことができました〜。発売前に2曲先行公開されていたので、今作が70年代風のエレメントを漂わせているのを想定していましたけど、全編を聴いてみると、想像以上にそうしたレイドバックした方向性で、まとめられた作風に仕上がっています。
ちなみに現在のメンバーは、トミー・ショウ(G)、ジェイムズ・ヤング(G)、チャック・パノッツォ(B)の昔からのおなじみのメンツに加え、前述のローレンス、リッキー・フィリップス(B、G)、トッド・ズッカーマン(Ds)ですね。
コロナ禍の困難の中で制作が進められた今作は、それぞれのパートを離れた場所で進めつつ、最終的にはトミー・ショウのスタジオでまとめられたようです。全15曲と多いんですけど、1分弱〜長くても4分程度の楽曲の集合体であり、全編通して1つの楽曲として捉えたくなる内容になっていますね。
基本的には、前作の延長線上にあるともいえますけど、よりハード・ロック調の激しさを削ぎ落とし、内省的なムードが支配しています。アコースティックの多用は牧歌的な雰囲気すらしますし、ハモンドオルガンやムーグ、メロトロンを使うなど、70年代の思わせるアレンジが随所に登場します。
美しいハーモニーも随所に聴かれるものの、70年代の一連の名作に見られる、叙情性を極めた雰囲気とまではいかず、メロディの扇情力も前作同様に残念ながら弱いので、何度か聴いているうちにじわじわと染み渡る、典型的なスルメ作品と言えるでしょう。
ちなみに、デニス・デ・ヤング最後のアルバム『26 East Vol.2』が、ほぼ同時期にリリースされ、こちらは日本盤が発売されていますが、ストリーミングでも楽しむことができます。本当に最後であれば、どうしても残念ながら再び交わることがなかった両者ですけど、2枚のアルバムを聴き比べるのも、味わい深いんではないかと思います。
今回ピックアップした「To Those」は、アルバムの中で比較的ハードで派手目なロック色の強いナンバーです。2021年とは思えない、いい意味で古めなシンセの響きとキャッチーなコーラスワークが乱舞する、70年代アメリカン・プログレ・ハード風味のアレンジが、実にいい塩梅で、スティクスらしさを改めて感じさせてくれるでしょう!
聴いてほしい度
75%
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