※CDじゃなくても、ストリーミングで聴ける新作をご紹介します!
2024年5月8日、アメリカのスラッシュ・メタル・バンド、元スレイヤー(SLAYER)のギタリスト、ケリー・キング(Kerry King)の1枚目のソロアルバム『From Hell I Rise』がリリースされました。今年2月に先行リリース曲「Idle Hands」の新曲レビューをしてから約3カ月で、フルアルバムが届きました〜。
純粋なギタリストのソロアルバムというより、ソロ名義の「ケリー・キング」というバンド、みたいな位置づけで発進したこのプロジェクトですが、先行曲をレビューした約1週間後に、まさかのスレイヤー復活!の一報が届くとは。。
センセーショナルにメタル界隈ではニュースとして取り上げられましたけど、現状では海外の大規模フェス3回に出演するスケジュールのみが決まっていますね。
これでケリー・キングのソロプロジェクトは一体どーなんの?と、アルバム発売を前に疑心暗鬼が広がってしまった感もありましたが、その後、ケリーの口からは「望んでないタイミングの再結成だったんだ」「レコーディングやツアーに繋がらないよ」など、スレイヤーの件はあくまでもピンポイントでのお祭りだぜといったニュアンスを、ことさら強調しているように感じられました。
このソロプロジェクトの追い風になるどころか、スレイヤー復活ならソロは必要なくない?みたいなネガティヴな論調になる前に、自ら火消しを行なっているようにも見えました。何れにせよ、ソロとしてのライヴもすでに行うなど、現時点ではこのプロジェクトに片手間ではなくフォーカスしているということでしょう。
本作のレコーディングメンバーを改めて整理すると、ケリーに加え、デス・エンジェルのマーク・オセグエダ(Vo)、ヴァイオレンスのフィル・デメル(G)、ヘルヤーのカイル・サンダース(B)そしてスレイヤーのポール・ボスタフ(Ds)の5人。
先行曲のレビューでも、どこを切ってもスレイヤー風味のスラッシュ・メタルとお伝えした通り、アルバム全編を聴いてもその印象は全く変わらず、ある意味で想定通りの音楽性と作風が徹頭徹尾貫かれています。
楽曲、各メンバーのパフォーマンス、サウンドプロダクション等々、スラッシュ / エクストリームメタル系としては最高水準のモノが聴けるのは間違いない1枚に仕上がっています。激走スラッシュチューンとヘヴィネスを効かせたミッドチューンが交互に配置されて、ダレを感じずに聴き進められるのもいいですね〜。
多少気になる点を挙げると、マークの歌唱が昨今のトム・アラヤを意識したのか一本調子に同じテンションでがなり立て過ぎな感があり、本来しっかりメロをパワフルに歌える人なので、もう少しノーマルボイスに寄せたり、キーを下げたりするバリエーションがあっても良かったなあと思います。
ケリーの刻むリフやリードギタープレイに関しても、スレイヤーでの持ち味を100%発揮してくれているのは嬉しいところですが、ソロ作ならではの異なる側面も聴いてみたかった気がしますね。
とはいえ、スレイヤーファンなら十分に熱狂できる作品でしょうから、スレイヤーがレギュラーで本格化しないのであれば、この1作で完結するのでなく、ツアーを重ねてより本格的にバンドとして胎動させて欲しいところ。その先には来日公演の可能性もあるでしょうし、今年後半の動向に注目していきましょう。
今回はアルバム後半11曲目に収録された「Rage」をピックアップしました!他の疾走曲がモロにスレイヤータイプの曲調やリズムに対して、この曲ではオーセンティックなツインバスドラムの連打による高速スラッシュチューンになっています。
ポールのドラミングもどこかフォビドゥン時代を彷彿とさせるものがあり、スレイヤー+デス・エンジェル+フォビドゥン、ヴァイオレンスといった雰囲気も充満しており、オールドスラッシャーにも嬉しい1曲といえるでしょう!
聴いてほしい度
86%
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