※80sを象徴する音楽、産業ロックのあれこれを紹介していきます!
カナダのメロディアス・ロック・バンド、トロント(TRONTO)が、2002年にリリースした、ベストアルバム『The Greatest Hits』CD盤の11曲目に収録。
女性ヴォーカリストのホリー・ウッズを擁するトロントは、そのバンド名の通り、オンタリオ州トロントで70年代後半に結成されました。80年にデビュー作をリリースしてリリースを重ねて行き、82年には「Your Daddy Don't Know」がカナディアンチャートのTOP5を飾るなど、国内では着実に実績を上げていきました。
ポップでメロディを重視した80s風味の強いアリーナ・産業ハードロック系のサウンドは、十分に日本人好みしそうな楽曲が揃っていましたね。ところが、他の多くのカナディアンバンド同様に、日本ではデビュー作のみ日本盤が出ている程度の状況で、なぜか知る人ぞ知る存在になっていました。
そんなトロントの名を皮肉にも知らしめたのが、今回ピックアップした「What About Love」でした。タイトルでわかる通り、イメージを大きく変えて勝負に出たハートが、85年にリリースして全米10位を獲得した大ヒット曲です。
知られた話ではありますけど、この曲はハート自身が書いたわけではなく、元々はトロントのために書かれた曲なんですね。作曲はトロントのギタリストであるシェロン・アルトンとブライアン・アレン、さらにトロントにドラマーとしてレコーディングに参加していたジム・ヴァンランスの共作なんですね。
トロント自身は83年にこの曲をレコーディングしましたけど、事もあろうにメンバー間の意見の食い違いでアルバムに収録されず、シングルとしてもリリースせずにお蔵入りさせてしまいます。。
そして、音楽出版にストックされていたこの曲を、担当者がハート側に提案、提供し、結果としてハートのメガヒットとして、世に広く知れ渡ったのです。結局、83年に先に収録されていたトロントのヴァージョンは、バックカタログがCD化された2002年にようやくボーナストラックとして陽の目を見ることになりました。
説明不要の楽曲ですけど、イントロのギターのアレンジなども含めハートとは異なる部分も少しあって、個人的には過剰な装飾を抑えて、ホリーの素晴らしい歌唱力とメロディの良さを際立たせたトロントヴァージョンもなかなかいいですね〜。
それにしても、もしトロントが先にリリースしていたなら、両者のその後の運命はどうなっていたのか、少し興味深いところです。
ぜひ、一度聴いてみてください!