コロナを取り巻く状況の変化とともに、昨年後半からようやく来日アーティストが徐々に戻ってきた洋楽シーン。HM/HRジャンルでも例外ではなく、2023年は昨年を大きく上回る公演の実現が期待できそうです。
本来であれば手放しで喜びたいところですが、、そうした公演にすでに足を運んだHM/HRファンなら誰もが痛感させられたのは、洋楽アーティストのチケット代高騰でしょう。昨年末のKISSのVIPチケット40万円は別次元として(笑)、通常のライヴチケットの高騰が止まりません。
例えば、、ホール公演だと2月メガデスのS席が12000円、A席でも11000円と余裕の諭吉超え。3月ディープ・パープルは、S席17000円とダブル論吉に近づいてます。ライヴハウス公演でも3月エンペラーが単独スタンディングで9800円と、こちらもほぼ諭吉。
フェス系では復活ノットフェストが、複数のチケット種類があるものの、声が出せない、モッシュもできない、アーティストもあまり見えないであろうスタンディングで15800円、、。
これらはほんの一例で、続々と決定している来日アーティストの公演詳細は、招聘元の情報を見ていただきたいですが、実感としてはコロナ前と比べて確実に10%〜20%は跳ね上がってしまった印象です。
コロナ以前も密かにじわじわと洋楽関連のチケット代は上昇傾向にありましたが、パッと受ける印象として、ここにきて一段と高くなり、一般的な感覚の許容範囲を超え始めたなあと、多くの購入者が痛感するのは間違いないでしょう。コロナに加え、是正されつつあるとはいえ、150円代まで進んだ円安傾向が直撃しているのは、想像に難くないですね。
振り返ると、筆者の世代がライヴに行きまくった80年代、90年代初頭の頃、チケット代は4000円〜6000円程度でしたので、隔世の感があります。あのスーパーロック84でさえ、10000円でお釣りがきましたからね。
その頃から比べると2倍ほどの価格になってますけど、我々の可処分所得が2倍になっているはずもなく、チケット代捻出に支障をきたすファンが、今後増えてきてもおかしくない状況です。
加えて、ライヴ参戦のもうひとつの楽しみである、グッズ関連の価格高騰にも歯止めがかかりません。これもアーティストやライヴによるでしょうが、今やTシャツ1枚5000円超えは当たり前。これまでが3000〜4000円程度だったと考えると、同様に10%~20%は上がってます。
チケットとグッズを1、2点買うだけで、わずか1公演の参戦に対し論吉2、3枚があっという間に吹っ飛んでしまうわけで、、。洋楽のロック、メタルのライヴに参戦する行為は、若者が気軽に楽しめるモノではなく、もはや完全に「大人の贅沢」になってしまいました。
邦楽のライヴなら、3分の2から半分程度の出費で楽しめるわけで、若い世代が邦楽に流れるのは致し方ないですね。メタルシーンにしても、比較的チケット代も安価で身近に楽しめて、音楽のレベルも上がっている日本のガールズメタル系に、筆者のようなおじさん世代が流れるのも至極当然と言えるでしょう。
多くの来日公演がセキを切ったように決まっていますけど、予算的にあれもこれも参戦できないとなると、ファン側もどのライヴに行くのか取捨選択に頭を悩ませそうですし、コンサートプロモーターにしても、先行予約などを通じていかに限られた観客を早めに囲い込むか、パイの奪い合いにもなりかねません。
大手プロモーターが招聘する大物アーティスト系は、円安やコロナの影響によるアーティストのギャラ高騰、会場費などを考えると、一度上がったチケット代が再び安くなることはまず考えられません。そのため、言葉は悪いですが、お金を出せるファンからVIPチケットなどでより高く集金して、採算を取っていく方向を強めざるを得ないでしょう。
一方で、小規模なプロモーターによるマニアックなアーティストの公演が目立ち始めていますけど、DIY精神前提で最低限の採算が成り立つレベルであれば、今後もこうした傾向の公演はさらに増えそうですね。このように、大物系とマニアック系という二極化と、その間を埋める存在としてのフェスという構図は、さらに推し進められそうです。
こうした状況下で、観客も高齢化していくシーンを活性化させるべく、若い世代や暫くライヴから遠ざかった層を呼び戻すには、もはや打つ手なしの印象もあります。それでも、海外でメタリカや日本でも一部の公演で実施されている学割の導入や、海外では当たり前の座席毎に細かく値段設定を行うダイナミックプライシングは、ぜひとも積極的に実践してほしいところです。
いずれにせよ、3月のラウドパークや今後の公演には、出演バンドなどの部分はもちろん、チケット代など運営がどうなされるのかにも注目すべきでしょう。
パンテラの南米公演の映像がYouTubeで見れますけど、若者も多数散見されるオーディエンスのコロナ前以上の熱狂ぶりには、まるで別世界のような印象を受けます。こうした光景の一部でも日本で再現できるのか?それとも日本のマーケットのガラパゴス化がさらに加速してしまうのか?2023年の来日公演は試金石になっていくでしょう。