ウクライナ出身のキーボーディスト、ヴィタリ・クープリ(Vitalij Kuprij)が、2024年2月20日に49歳で亡くなりました。
90年代後期からアーテンション(ARTENSION)やリング・オブ・ファイア(RING OF FIRE)をはじめとしたメタルバンドでの活躍を皮切りに、ソロでのキーボード奏者としても、その並外れた才能をいかんなく発揮していたヴィタリから、まさかの訃報が届いてしまいました。。
驚いたのがまだ49歳という若さ、年齢でしょう。90年代にシーンに登場した当初から、あまりに完成されたプレイだったので、当時20代そこそこだった事実が信じ難く、改めて天才的なプレイヤーだったことを思い知らされます。
ヴィタリはウクライナのキーウで音楽一家の家庭に生まれ、6歳でピアノを始めました。レッスンを重ね、キーウやアメリカの音楽学校に入学後はメキメキと頭角を表し、旧ソ連のショパンコンクールで1位になるなど、クラシック界で将来を嘱望された存在だったわけですね。
そんな若き天才であったヴィタリがHM/HRに出会い、影響を受けたクラシックとメタルを巧みに融合させた素晴らしい音楽を我々に届けてくれたわけですから、巡り合わせというのはわからないものです。
当初はマイク・ヴァーニーのシュラプネルからアーテンションやソロ作品を複数リリースしてきましたが、2000年代に入って、フィンランドのライオン・ミュージックからも幾つかの作品を送り出していました。自身もブック・オブ・リフレクションズ等で関わりの深かったレーベルオーナーのラーズ・エリック・マットソンから、悲痛なコメントが寄せられたのは印象的でした。
近年はHM/HRファンにとっては、目立ったリリースがなかったかもですが、メタルとクラシックの架け橋となる多くの作品の価値は測り知れないですし、とりわけソロ作品における両者の積極的な融合や、メタルにおける鍵盤奏者の地位を高めた功績は、後世に名を残すものでしょう。
追悼の1曲は、1997年にリリースされた2枚目のソロ名義作『Extreme Measures』から、「Track on Fire」をピックアップしてみました。ジョージ・ベラス(G)、ジョン・ドーマン(Ds)らとの凄まじいインタープレイのなかで、ヴィタリの超絶技巧が炸裂するこの曲を聴きながら、ご冥福をお祈りしたいと思います。
R.I.P. Vitalij Kuprij
関連コラムはこちら